「今日はエエもん持ってきたでぇ!」
部屋に上がりこむなり開口一発目に言うと、先輩はニタッと笑った。
「新しいネタやねんけど、お前に一足先に見せたるわ」
「・・・・・・はぁ」
言われてみれば肩からおろしたカバンは、いつもよりかさばっている。
そんな嬉しそうに恩着せがましくいわれても、非常にリアクションに困る。
しばらくぼうっと見つめてから気の抜けた相槌を返すと、先輩は
おれをムシして自分の荷物をあさり始めた。
おもむろにくるっと振り向いたので何かと思えば、無表情のまま先輩はさらりと宣告した。
「ほな、準備するから出ていってや
「・・・・・・・・・・・は??」
「早よ」
「・・・ーここおれん家なんですけど」
当然の反論も「ええからさっさと出てけや!」という怒号と強引な両手によって押し返される。
初めて自分の部屋から閉め出しをくらって(ご丁寧にカギまでかけよった)思わず、重い溜め息が漏れた。
「よっしゃ、入ってええで!!」
その後、向こうからOKが出たのは何分後だったか。
馬鹿みたいに部屋の外でぼーっと座り込んでいると、中から急に呼ばれた。
「やりたい放題やな・・」
本人にはさすがにまだ言ったことない台詞を洩らして、そっとドアを開ける。
自分の部屋にこんなに遠慮がちに入ることも多分、人生初だ。
「・・・・・・・」
薄く開いた扉から部屋をのぞいてーーー
中に見えた真実を受け止められず、黙ってもう一度ドアを閉めた。
意識せずとも口の端から重い溜め息が漏れる。
そして当然部屋からとんでくる怒りの声。
「ちょ、なんで閉めるねん!オイ」
「ーーなかったことに」
「すな!!」
勢いよくツッコみながら、今度は内側から出てこようとした先輩を慌てて部屋の中に押し込んだ。
もし今この状況を身内にでも見られようものなら、会話どころかしばらく目もあわせられなくなる。
ーというか 舌噛んで死んだ方がマシかも。
後ろ手でドアを閉め、改めて目の前に立ちふさがる先輩を見てみる。
やっぱり溜め息しか出ない。
そんな俺の態度が不服だったのか先輩がむっと顔をゆがめた。
「なんとか言えや」
「・・・はあ、あのー・・・、どないしたんですかそれ・・・」
「せやから、次のネタの衣装やんけ」
いやに得意げに言い放つ先輩は、
所謂・・・オーソドックスなセーラー服に身を包んでいた。
悲しいかな幻覚ではなくこれは真実で、
ひらひら膝上でゆれる濃紺のスカートが扇情的ーーーーとは、お世辞にも言えない。
言ったら負ける、なにかに。
諦めたように眺める俺の目線をどう捕らえたのか、先輩はニヤリと笑った。
「萌えるやろ」
「・・・。そーですね」
喉元まで出かかった「アホですか」の一言をどうにか飲み込んだ。
棒読みの感想にも気をよくしたのか
先輩は笑顔のままエンジ色のスカーフの端をいじりつつ聞いてもないのに説明しはじめた。
「格好で笑いとるんは好かんのやけど、たまにはいいやろ?」
「はあ・・・」
「俺としては小春が着てもエエと思うんやけど・・」
「・・・・・・・・・それは、色々マズイと思います」
「なんで?」
可愛すぎるから?とか真顔で返されて、
うまくツッコめずに曖昧にごまかしておいた。
入手先を聞くと「いとこの姉ちゃんのおさがり」と返される。
どおりでこの近辺じゃ見かけない制服のはずだった。
そしてこの人はなんと理由をつけてしてこれをもらったのか、ーどうでもいいけどすごい気になる。
・・・しかし丈の長さも肩幅も、ほとんど違和感がないところが恐ろしい。
わざわざ紺ソクまで用意している周到さにも驚いたが何より。まさに無駄すぎるほど、完璧な着こなしぶりだった。
「・・・で、それをなんで俺の前で着て見してくれたんすか?」
「いや?特に意味はあらへんけど」
「可愛い〜とか言われたいんかと思うて」
「・・ち、ちゃうわ!アホ」
今更赤くなって一人で怒っている先輩は、本当に理由など考えていなかったようだ。
改めて口に手を当て、じっと観察してみる。
ーーそんなコアな趣味はないけど、アリかナシで言うなら、まぁアリだと思う。
「あんたが着たほうがええ思いますよ。似合てるし」
「・・・・・・喜んでええんか、微妙やな」
褒めたら褒めたで不満そうな反応にじゃあどうして欲しいんだ、と心の中で軽くつっこむ。
しばらく考えてから、何だかんだでまんざらでもなさそうな
相手の態度を感じとって少し、冒険してみることにした。
「先輩。ちょっと試したいことあるんですけど」
目を丸くした先輩に笑いかけてから大きな襟のついた肩に手を載せ、
無防備な唇に軽いキスをした。
そのままベッドにすとんと座らせ、剥き出しの脚を跨いで座ると、ことを察したようにニヤッと笑う。
多少の抵抗を予想したのに案外すんなり受け入れられて拍子抜け・・・ということはなく。
もう一度軽く唇をあわせれば、逆に腕を首に回されて深く口付けられる。
ぎゅっと背中に抱きつかれて、一緒にゆっくりと後ろへ倒れこむ。
・・・なんか。まんまと煽られてるのはおれの方じゃないか?
今更はたと気づく。
思わず動きを止め目を瞠ると、押し倒されたままの先輩はものすごいニヤニヤしている。
「ーーっは、やらしいわぁ〜財前くん」
「・・ーはぁ?」
どっちがや、とツッコみたいのを抑えて淡々と聞き返す。
「せやて、このカッコでヤるとか・・めっちゃやらしーやん」
「ーーーまあ…コスプレには変わりないですね…」
このタイミングでそんなことを言われても…
余計にやましいことをしていると実感し、手の平が妙に汗ばむ。
正直、まさかこのまま「する」ところまでは考えてなかった。
けれどここでやめるとも言えず、さらにおれの下敷きになっている
先輩の余裕こいた笑顔を見たら、やけに腹がたってきた。
「…じゃ、マニアックなAVみたいに反応してや。先輩」
って何言うてんねや、とセルフつっこみしながら少しぐらい
ゆとりぶった風にしたくて、笑いながらつやっとした髪を撫でる。
半ば冗談のつもりだったのに、先輩は
目を瞠りながら「…そんなん、できるかな」と呟いた。
スカートから出た引き締まってる太腿を手をつっこみ下から撫でる。
内股のうすい皮膚を爪の先でなぞれば、先輩は足をよじらせる。
それを見ながら次はダイレクトに股間を撫であげた。
「…っ、あ!」
びく、と引き攣る体、格好は女でも当然ながら相手は男で、
下着越しのそこはすでに標準よりも膨らんでる。
「……ぱんつは普通なんすね」
「ーって、何期待しとん?!」
ぎょっとしたように顔を赤らめる先輩、そういう冗談をなかなかこの人は理解しない。
これでほんとに下着まで女モンやったらさすがに引いてた。
しつこいけど、俺にそこまでコアな趣味はない。
「…いや。嘘ですって」
「…な、なあんやぁ」
露骨にほっとした顔、むだに可愛い。
布越しのまま指で挟んだり揉んだりするうち、
濃いグレーのちょうど先っぽの辺りが濡れたシミで黒ずんできた。
分かってながらしつこく触ると、内側からぬちゃぬちゃと音がしてくる。
「先輩もう、濡らしすぎや」
「……っ、ふ…んっ」
唇を噛み締めて真っ赤なまま俯く先輩、声は堪えれてもコッチを止めるのは無理だろう。
現にものすごく湿ってきてる。思うに、先輩はイったときの精液に比べて
前戯の先走りの量のが多い気がする。まあどっちでもいいけど。
スカートをめくりあげてズルズルになった下着をいきなり脱がすと、
はっとしたみたいに先輩が顔を上げた。恥ずかしいらしくって頬が赤い。
そりゃそうか、見た目はすっかり女子高生なのに、下半身は…男の証が思いきり存在を主張している。
ものすごく、想像以上に…倒錯的。
思わずしばらく上から全体を見下ろしたまま、固まってしまう。
「や…嫌、や…っ見んといて…」
か細い抵抗と鼻声に興奮するよりも、逆に頭のなかが冷静になってきた。
先輩の態度も演技じゃない。思わず視線をそらし、体を起こす。
「…、財、前?」
「ーやっぱ 止めときましょ、先輩」
「……え」
赤らんだ頬からざっと血の気が引くのが手にとるように分かる。
あ…やば、また言い方間違えたかも。
「ーそない、イヤやった…?…」
泣きそうな声に内心うろたえながら、それでもこれ以上不安にさせないように言葉を選ぶ。
柔らかい唇にキスして、少し汗ばんだ額を撫でる。
「ーおれはアンタのことが好きなんであって、コスプレが好きなんちゃいます。やから」
じっと目を見つめて一呼吸。
「…これ脱いで、続きしよ。先輩」
スカーフのはしを引っ張ると、潤んだ先輩の目が丸くなった。
…なんかすごく、恥ずかしいことを言った気がして、思わず相手の肩に顔を埋める。
ーーーでも先輩がやっと笑ったから…まぁ良いとする。
続きはちょっと嫌がられるかと思ったのに
むしろ「途中で止めんな」と言われ、そのままなしくずしになってしまった。
終わったあと、傍若無人に部屋から俺を追い出した時からは
想像できないぐらい、あどけない顔で眠る先輩を見つめる。…勿論、最中も普段とは掛け離れているけど。
にしても、あのセーラー服で普通にお笑いとかやられて、もう直視できる自信がない。
嫌にでもさっきの姿を思い出すからだ。
「…やっぱ小春先輩に着てもらおかな」
そしたらこのアホな先輩があの人にかわいいかわいい連呼して、
イラッとするのは必須だけど、まぁ…しゃーないか。
「…おれは、ユウジ先輩の中身が 好きやねんで」
相手には聞こえてないのをいいことに耳元で囁き、目を閉じた。
END
書きかけ放置プレイだったのを救出してみた。何を思っての女装ネタ…(白目)
ガッツリやっちゃうと財前くんが崩壊しそうだったので正気に戻っていただきました。やってる描写がないのはせめてもの償いのつもり…
ほんとすいません。最初らへん明らかにギャグなのになにこれ…!いきなりやらしくなって急に失速してる・・なにこれ・・!(白目)
結局はラブラブしてる財ユウ。中学生なので新しいプレイはまだハードルが高すぎる、ちゅうことでひとつ。もっと甘いのかきたいなぁ…(´・ω・`)
21/01/31
|