かんかん照りの大陽の下、いつものようにボールを追い掛ける。

ふいに、珍しく最初から部活に参加していた千歳が
立ち止まり空を見上げているのに気がついた。

そうっと近寄って、横から千歳と夏の青空を交互に見上げる。

直射日光が目の端に入って思わず声をあげると、
ようやく千歳が俺の方を向いた…というか、見下ろしてきた。


「何してん、お前」

「ん?いや、もうじき雨んなるなぁと思うて」

「……はあ?!」


千歳の台詞に、もう一度空を仰ぐ。
真っ青な空に白い入道雲がいくつも見える、誰がどう見たって
一滴の雨すら降りそうもない天気、なのに。

改めて千歳を見ても冗談を言ったふうでもなく、あくまで普通。
何とツッコむべきか悩んでると、困惑したのが
顔に出てたのか、上の方で相手が笑う気配がした。


「嘘じゃなかよ。そやね…あと10分、かな」

「ええー…」


どうも釈然としなくて不満げな声を漏らす俺に、
千歳はそれ以上なにも言わずに黙ってニコニコとしていた。



その約10分後、ぽつんとコートに染みを作った雫は
そのままどんどん面積を増やしていって、
水しぶきをあげるほどの土砂降りへ変わっていった。

皆が皆、急いで屋根がある方に避難していったけれど、
着くころにはもう全身びしょ濡れで。

俺はというと、まさかの千歳の的中予想に半ば呆然として、
いまさら雨から逃れるのもばからしくじっとしていた。

すると、うしろからジャリッと濡れた地面を歩く音がする。
振り返ったら。


「ほら、当たったとやろ?」

「ち、千歳?!」


そこに立っていた千歳は俺と同じく
雨ざらしのずぶ濡れで、いやに誇らしげに笑っていた。


「お前…何で降るん分かっとったのに外おんねん」


降る前に室内に逃げておけば濡れずにすんだのに。
そう言ってからぽかんと見上げると、目に雨粒が入って痛い。

千歳は長い前髪から雫を垂らしながら「…あっ、そうか」と言った。
ほんとうに、スゴいところはスゴいのに、救いようのないアホである。


気付けばコートには当然ながら俺たち二人しかおらず、
激しい雨のせいで夏の空気は煙り始めていた。

しかし、おかげで体にたまった熱がすっきり洗い落とされた気がする。


「はあ、こないなったら部活も終わりやな。着替えー」

「ユウジ」


部室に戻ろうとした俺の腕を千歳がさっと掴む。
雨にうたれたのにどうしてか、手の平がやけに熱い。


「こっち、行こ」


薄暗く陰った空を背負い、悪戯に笑う千歳の顔を見て、
何を言わんとしてるのかピンときた。

それでも掴んだ手を振り払わなかったのはただ…何となく。
無表情を浮かべたままで、小さく頷いた。





無人のグラウンドに隣接した準備倉庫の扉を開ける。
雨に濡れた引き戸はイヤな音を立てて、湿気た埃の独特な匂いが鼻をつく。

ちょっと文句を言おうと振り向くと、がっつくように唇を塞がれた。


「んっ…、ふ!」


肩を抱き寄せられ、舌を入れて口の中を掻き回される。
閉ざした扉の向こうに響く雨音に混じり、薄暗がりにくちゅくちゅ言う唾液の絡む
音。

濡れたユニフォームが肌にくっついて気持ち悪い。
雨の下にいるときはあまり思わなかったのに。
でもそんな不快さなんて、長いキスでとろとろに溶けてしまう。


「ふ、っは…あ」

「ふふ、ユウジの顔やらしか」

「なっお…お前かて、大概…、っ!」


反論しかけた俺を無視して、後ろから抱きとめられたまま
服越しに大きい手で胸元を撫でられる。

恥ずかしいかな雨とさっきのキスで、
布の上からでも分かるぐらい胸の先が尖っていた。
当然、相手がそれを見逃すハズもなくて。


「あっ…や、ぁ…ッ」


きゅん、とそこを両手で摘まれて自然と声が上がる。
同時に、すでに下着の中まで雨で濡れている下半身がズンと熱くなった。


「…ユウジ、気持ち良か?」

「んあ、っ…あ、あっ」


尋ねながらも指先は服ごと乳首を執拗に捏ねてくる。
声なんて出したくないのに、変な高い声と吐息が我慢できない。

それどころか早く直接さわって欲しい、なんて思ってしまう
自分が信じられなくて、必死に頭を振った。

もどかしい刺激に涙目になっていると、唐突に利き手で股間を撫でられた。


「ひ、っわ…!あ」

「すごい勃っとるよ、ユウジ」

「…ゆ、わんでえ…っ!」


立ったまま後ろから抱きすくめられる格好で
千歳の顔が俺の肩に乗っかる。
俺は自分の力じゃもうしっかり立てす、千歳に半分寄り掛かりながらされるがまま。


「ユウジユウジ」

「な…やねん、」


やらしいことをするくせに、千歳は
いつもどおりの口調を崩さないから何かと拍子抜けする。

ただ、ちらりと横に見た相手の顔はイタズラを楽しんでる風に見えた。


「ここ、雨ん濡れて…張り付いて、やらしか」

「…!」


反射的に視線を下に向けてしまい、後悔した。

雨の水分で体にぴったりくっついた短パンが、
千歳の愛撫で勃ち上がったそこの形をくっきり浮き上がらせている。

あまりの羞恥に顔が焼けるほど熱くなって、逃げようと力を籠めるも全く意味がなくて。
こんなんなら全部脱いでるほうがマシだ。


「や…っ!イヤや、嫌や嫌や見んな…!」


半ばやけくそに手足をばたつかせると、
千歳は宥めるように首筋にキスをおとし、俺の短パンを下着ごと下にずらした。


「…ッ、あ」


途端に勃起したそれが空気に触れ、
全身がふるりと震える。


「ごめんね、ユウジ」


後ろからぎゅっとされて小さな低音で耳元に囁かれ、頬がかっとなる。
心臓がバクバクする。

結局、何をされても千歳の声と体温と、
困った顔を見ると許してしまう自分がいて。

多分、相手もそれを分かってやってるんじゃないかと思うけど
まぁ別にいいや、と思えるあたり、俺もカナリ終わってるっぽい。


「あっ、」


相手の手の平が固くなったそこを優しく包む。
ほんの少し扱かれただけで、先走りが垂れてきたのが分かる。

すっかり体を千歳に預け、ほてる顔をぐっと
相手に向けて持ち上げると、上から啄むように唇へキスされた。


「ん…千歳、も…っ」


いかせて。
自分に色気なんてこれっぽっちもない自覚はある。
それでも俺なりに精一杯甘えた声で言うと、千歳は俺よりずっと大人っぽい顔で笑った。


「ふ、あっ…あ…!」


後ろから片手で体を支えられたまま、
もう片方の手の平で限界が近いそこを上下に扱かれる。
雨以外のぬめる水気がくちゅくちゅいやらしい音をたてて、
どんどん追い詰められていく。


「…むぞらしか、ユウジ」

「ん、あっ…あ、ひあ…っ!」


その言葉に返事をする余裕もなく、
ぞくっと体がひときわ大きく震えて、千歳の手の中でそこが弾けた。

暗がりでも白い粘着質の液体が勃起した先からぴゅく、と飛んだのが分かる。
どこか他人事のようにそれを見ると同時に、全身からさらに力が抜けて放心する。


「…っ!」


と、唐突に剥き出しになった下半身の後ろ側に熱く固い感触を直に感じて、体がはねた。
生々しい熱にかあっとなり、まさか、と硬直する。


「…っち、ちと、…せ」


達したばかりでうまく呂律が回らないまま必死で首を後ろに向ける。
このまま…まったく慣らさないまま、中に押し入られたら…
考えるだけで血の気がさっと引いた。

そんな様子を察したのか、千歳は困ったように笑う。


「ん、いや…挿れんけん、大丈夫。で、あの、な。ユウジ、」


途切れた言葉にひとまず安心するも、
背後から布が擦れる音がして続けざまに、
俺の股間に千歳の固くなった性器が差し込まれて息を飲む。

自分の出した精液といろいろでぬるんと滑った感触に、全身が震えた。


「ひ、わ…っ、ちと…っ、」

「ごめん、ちょっとだけ」


珍しく余裕のない熱い息が耳に届く。

片手で腰を引き寄せられ、だいたい何をどうするのか想像はつくけれど、
初めての体勢に体が強張る。


支えられながら向かいの壁に手をつくと、
ほぼ同時に股の間の熱いものが抜き差しを始める。

ある意味、一番敏感なところを擦りあっているようなものだから、
内側じゃなくダイレクトに身体を刺激されて、今まで味わったことのない感覚に襲われた。


「んあ、っあ…!ち、と…、っふあ!」

「っごめ、も…すぐ、やけん…」


恥部が重なってぐちぐちやらしい音をたてる。
さっき達したばかりなのに、擦り付けられる熱にいやでも反応してしまう。

ふいに見下ろした自分のそこはまた勃ち上がり、だらしなく先走りを垂らしていた

恥ずかしさと気持ちいいのがごちゃまぜになって、咄嗟にきつく目をつむった。


「…っ、や、ぁ!」

「…っふ、ユウジ、」

「…っ」


一際色っぽい声が鼓膜を震わすと、
下半身にふれる固い熱が限界を迎えたのに気付く。

股に温かいものがかかり、少し遅れて、俺も二回目の精を放った。




「ーーーなんかさぁ」


はからずも不満そうな声が出て、後始末を終えた千歳が顔を上げる。

高跳び用のマットに座り、なぜか千歳がジャージに仕込んでたタオルで
綺麗になった自分の足を見つめてから、ゆっくり視線をずらす。


「……普通にエッチするより恥ずいわ、こうゆうの」


本音をまっすぐぶつけたら、正面に居る千歳は瞠目して、困ったように笑う。
珍しいことに千歳は心なしか、照れてる風に見えた。


「ーごめん、我慢できらんでつい」

「…別に。ええけど」

「あんまりに…ユウジが可愛いけん、つい」

「っ、せやからもうええっちゅーねん!」


恥ずかしくてつい声を荒げる。
千歳は黙って微笑んでから、正面から俺のことを抱きしめてきた。



これからしばらくは、この準備倉庫には入れないだろう。
間違いなく、さっきまでのことを思い出してしまうから。


へらへらしながら千歳が開けた扉の向こうには、
見るも鮮やかな夏空が広がっていた。



END

何かいろいろごめんなさい。と言いたいチトユウ。違う、雨にぬれたまま、っていうのがやりたかっただけなんだ・・!
どっちも幸せだったらそれでいいんじゃなかろうか・・・(責任放棄)いちゃいちゃ発情してるチトユウが すき!!
翌日、途中で消えた二人は白石におこられます。でも幸せだったらそr(略)
21/07/23