まずはじめに、ユウジが俺の部屋にある将棋盤をみつけて「教えて」と言ってきた。
しばらくは俺の言うことをふんふんと聞いていたものの、
すぐに飽きたらしく「もうええわ」と言った(ていねいに教えてあげたつもりだったのですこし悲しかった)。
ちょうどそのときユウジの携帯に電話がかかってきて(相手は謙也だった)
何か梅田でユウジの好きな誰やらいう芸人を見たとかで、えらい盛り上がっていた。
俺は取り残された気持ちになりながらも「こんなんで妬いてちゃ大人らしくなか!」と言い聞かせ、
ひとりで本を片手に将棋を始めた。
電話するユウジの声を聞きながらも、しだいに手元にのめり込んでいって…
「…いつの間に」
しばらくして静けさに気付きはっと顔をあげたら、
ユウジは閉じた携帯を片手に俺のベッドで仰向けになって眠ってしまっていた。
しかも、かなり深く寝入ってそうな感じ。
…もしかして、電話が終わってからしばらく俺の方を見てたんだろうか?名前を呼んだかもしれない。
全く気付けなかった自分と、なんだかユウジにかわいそうなことしたと思い、しょんぼりした。
「…ユウジ」
呼んでみても、ぐっすり眠るユウジは規則正しく胸を上下させるだけ。
立ち上がって上から覗き込む。
薄く開いた唇から八重歯が見える。
吸い寄せられるようにそのまま唇にキスをした。
「…ん、」
至近距離の眉根が少し寄せられる。
上唇を舌で嘗めると、さらに険しい顔になった。
「なんか…」
むらむらする。
散々放置しておいて寝てしまった相手に(そりゃユウジも長電話してたからお互い様かも)
なんてことをと思うも、一度自覚してしまったらもうとめられない。
なるたけ静かにベッドへと乗り上げ、ユウジに向かい合う態勢で足を跨ぐ。
「…すまん、ユウジ」
一応つぶやいておいてから、無防備な制服のシャツに手をのばした。
まったく目を覚まさないのをいいことに、
シャツの前を寛げて中に着ているTシャツをめくりあげる。
外気に晒された胸の突起がつん、と尖っていた。そこを指先でほんの少し弾く。
ユウジはうん、と唸ったけど、まだ眠っている。
このままどこまでできるかな、なんて不埒なことを考えながら
空いたほうの手でズボン越しに股間を撫であげると、すでにそこはちょっと勃ちかけていてつい口角が上がる。
「ユウジ、いやらしか」
自分のことを棚にあげて何度か手の平を上下させると、
少し身体をよじる仕種は見せるも目は未だ開かない。
そっとベルトに手をかけ、躊躇せずズボンと下着を引き下ろした。
俺がさわったせいですっかり勃起したそれが開放され、
目の前でふるりと揺れる。「うわあ」思わず声が出て、息を飲む。
下半身むき出しで胸までめくりあがったまま、ユウジはぐっすり眠っている。
心なしか頬が赤く呼吸が速いのは、夢と現実の狭間でやらしい感覚と戦ってるんだろうか。
…だけど、非常に勝手ながら。
「…そろそろ声が聞きたか、ユウジ」
ひとりで一方的に仕掛ける悪戯がだんだん寂しくなってきた。
はやく、やらしくてかわいい声が聞きたい。一緒にきもちよくなりたい。
思うが早いか、軽く唇に口付けると、身体ごと下に移動し、勃ちあがったユウジの性器を口に含んだ。
途端にじわ、と苦いものが広がる。
気がつくかなぁと願いながら、ユウジが一番弱いところを舌で刺激して、唇に挟んで上下に扱く。
「んー…ふあ、やぁ…あ、ん」
恐らく無意識に腰を突き出してきてるから、喉の最奥までくわえ込んでやる。
日焼けしていない太ももがぴくぴくして、それだけでも十分やらしい。
「あっあ、…ーふえ…っ?」
ぱっと顔を上げると、まるく見開かれたユウジの目と目があった。
半身を起こして半開きの口のまま呆然とするユウジは、当然ながら状況が把握できてないらしい。
「…おはよ」
性器から口を離して微笑む。唇につっ、となにか分からない糸が引く。
唾液と先走りでぬるぬるになったそれ越しにユウジのほうを見ていると、みるみるうちに顔を真っ赤にさせた。
「…なっ!!ちと、おま…っ!!!」
「だってーユウジが起きんけん…」
「そういう…!ばかぁ!アホ!さ、さいあくや…っ!」
泣きそうになりながらあられもない自分の姿を隠そうと必死になるユウジに
ぞくぞくする俺はちょっとおかしいのかもしれない。
閉じようとする脚を押さえて、驚きで萎えかけた性器を左手で握る。
「ふや、ぁ…!」
「あとでなんぼでも怒られるけん、」
今はこっち集中して?
宥めるつもりで言ったのだが、よほど俺が切羽詰まった顔をしていたらしく、
ユウジは今に泣きそうな表情をグシャっと歪め、黙ってひとつだけ小さく頷いた。
受け入れる場所を指でなぞると、色づいたそこはひくひく震える。先走りで濡らした指を窮屈な中に入れれば
ユウジは嬌声をあげまいと必死に堪えながらも、どこか今の行為にまだ釈然としない風に見えた。
「ひ、んっあ…!」
「…すまんばいね、あんまりユウジが無防備に寝とるけん、いたずらしたくなったと」
「…っそ、なん、しるか…っあ!」
朱の射した頬を見るかぎり、実はもうそんなに怒ってないらしいことに気付く。
なんだかんだでユウジは、俺に対してすごくやさしい。
いたずらしたお詫びにうんと気持ちよくしてあげようと、中の指を動かしてユウジがよく感じるとこを狙って攻める。
「あっ、やぁ…!ちとせ…っ、嫌、あっ」
「…のわりに、気持ちよさそうたいね」
首はイヤイヤって横に振り、それでも無意識に
腰を揺らすのがすごくやらしい。
散々唇で弄んだユウジの性器は今にも弾けそうで、そろそろいいかと指を引き抜く。
短く声をあげて一瞬、喪失感で少し寂しげな顔をする。そんなのも、本当に反則。
「ー…ユウジ」
名前を呼び、自身の熱源を慣らした入口に押し当てる。
ぴく、と体を揺らし視線をさ迷わせる相手にこっちを向くよう促して、ユウジが目覚めてから今日初めてのキスをする。
「ん…っ」
唇をあわせたまま、ゆっくり腰を沈めていく。
ユウジのあたたかな内側に包まれている感触が、じわじわ全身に広がる。
つながる一部分から快感が体じゅうに転移していくかんじ。
「あ、あっ、あ…!」
「…っユウジのなか、気持ちよか」
口をついて出た感想に言わんでええねんアホ!と肩を小突かれた。
最初の頃はお互い、最中に話すなんてゆとり微塵もなかったのに今は随分と慣れたものだと、
長くなってきた付き合いに嬉しさが込み上げる。
なによりも、ユウジが痛そうな顔をほとんどしなくなったのが、一番の喜び。
幾度か抜き差しを繰り返すうち、両腕が伸びてきて首に絡む。
ぎゅっと下から抱き寄せられたのを合図に、少し強めの律動を始める。
「あっ…!ふあ、あ、あ!あか…っも、いく…っ、う」
「ん…っ、出して、ええよ…」
きゅうきゅうキツく締め付けてくる感覚に、もう限界が近いのを感じとる。
自分もあんまり持ちそうにないと、一息に最奥まで打ち付けた。
「あ、あ…っ!ち、と…千歳ぇ…っ!」
「…っ」
名前を呼び震える唇を覆うようにキスをすると、直後に腹の辺りに温かいものがかかる。
それがユウジの精液と分かったと同時に、俺も内側で達した。
「も、ほんっまお前サイテー」
後始末を終えると同時に布団に埋もれたユウジが、抑揚のない声音で呟く。
流されてしまったとはいえ、寝込みを襲った俺に非があるのは確かだ。
頭があるらしき場所を撫でて、苦笑いする。
「ごめん、もうせんから」
「っあ、あたり前や!」
「…うん。だけん、ユウジ」
顔が見たくて布団をめくれば、ユウジの赤い目元と拗ねた口許がかわいくて
啄むようにキスを落とす。
「一緒におるときは一人にならんことにしよう?」
やっぱり顔を見て、声を聞いて、両思いをふたりで確認するのが一番いい。
END
なにかよくわからないけど…とりあえずこのちとゆうがバカップルだということが伝えたかった、そんなオチですね。
寝てるユウジにあれこれするのは千歳と財前どっちにするか非っ常〜に悩んだんですが、結局千歳でFA。
にしても「いたずら」という言葉には無限の可能性がありますね・・なんのはなし。
21/09/29