肩にのしかかる重さに呻きつつ、ゆっくり目を開ける。
室内は薄暗く、すべての輪郭がぼんやりとしか見えないが、
自分の体が真正面から腕に抱き込まれるようにがっちりホールドされているのは分かった。
視線の先にいる大男は、未だすっかり夢の中。
規則正しく続く呼吸に安堵しつつも、
逃がすものかと言わんばかりの抱きつかれ方に、苦笑が込み上げた。
昨夜はそのまま千歳の部屋にお泊りして、現在に至る。
学校も冬休み期間中で、当分これといった予定もない。
それをいいことに昨晩は所謂やることをやってしまったせいで、体じゅうがだるかった。
「(…まあ俺も、拒否らんかったけど、な…)」
いろいろ思い出して頬を熱くしながら、手を伸ばして千歳の長い前髪をよけてやる。
昨夜は大晦日、と同時に、千歳の生まれた日でもあった。
つまり今朝は元旦である。あまり実感は沸かなかったが。
こんな年の瀬が誕生日だなんて、よくもまあ忙しい日に生まれたものだ。
忙しい雰囲気の中で生まれてきたせいなのか、千歳本人はとてものんびりとしている。
その証拠に、いままで千歳から忙しさや忙しなさを感じたことがない。
だからこんなに大きく育ちすぎたのかもしれないと余計なことを思った。
改めて、正面に眠る千歳のことを見つめる。
年末は、てっきり千歳は故郷に帰るものだと思っていた。
それがどうしたわけか何事もないかのようにこっちに残って、
果ては「泊まりにおいで」などと言われたものだからびっくりした。
自分自身、家族以外と一緒に迎える年明けは初めてだったから
柄にもなく少し緊張したりしたものの、
迎えてくれた千歳があまりにもいつもどおりで、次第に構えていた気持ちが解れていった。
昨晩、濃い黒の睫毛にくちびる、大きな手の平はすべて、自分だけのものだった。
重なる浅黒い肌は撫でると暖かく、乾燥のせいか少しかさついている。
こうして二人きりで年明けを迎えて、
目の前で千歳がひとつ年を重ねた。
ひとつひとつは当たり前のことなのに、ひどく特別なことのように感じる。
「(あー…なんか、)」
急にドキドキしてきて、心臓がきゅっとなる。
思わず相手のからだにしがみつくと、耳元で微かに息が漏れる音がした。
「ん…、ユウジ、起きたと?」
掠れた声にぴくん、と体を震わせ、裸の胸に埋もれたまま頷く。
いつの間にか背中に回されていた手が、そろりと腰の方に
降りるのに気づきはっとなって顔を上げると、千歳は困ったように笑った。
どうやらさすがに朝からやましいことをするつもりではないらしい。
「…すまんばいね。昨日も無理、させたけん」
「ん、なこと、べつに」
あらへん、と続ける前に、労るように腰を撫でられて頬がほてる。
無理矢理などではなく同意の上でしていることなのだから、謝られる理由はない。
そんな思いでもう一度、正面からギュッと千歳に抱き着いた。
顔を持ち上げて鼻を相手の首筋に押し付け、すうっと息を吸い込む。すると、千歳が小さく笑った。
「なん、どげんしたと?」
「…ん、千歳のにおいやなぁ思て」
「え、たぶん汗くさかよ」
「んなことないで」
続けて鼻先を埋めたまま擦り寄って、伏せていた睫毛を持ち上げる。
千歳はまだニヤニヤ笑っている。
「…なん?」
「んや、ユウジはほんっと…子猫みたいやねえ」
そう言って蕩けるようにふにゃあと笑い、腕の中に包みこまれて、つむじのてっぺんにキスされた。
恥ずかしいやら照れ臭いやらで言葉が出ず、心臓がまた高鳴るのが分かる。
千歳と一緒にいたら、ドキドキしすぎて心臓が弱って早死にしてしまいそうだ。
自分が感じているように、相手も思ってくれているだろうか。
抱きしめたからだに回した手の平で、千歳の広い背中を撫でる。
自分よりずっと大きな背中は暖かく、心臓の脈打つ音が体じゅうに響いた。
「…千歳」
「ん?」
「おめでとお。と、…ありがとう」
誕生日も新年も、そして今、こうして傍にいることも。
祝う気持ちと感謝の気持ちがない交ぜになって、旨いっぱいに押し寄せる。
離れてしまったらもう生きていけないと、依存症のような思いを互いに共有する。
浮かべた年相応な笑顔が愛しくて、掬い上げるようにくちびるへキスをした。
((ヾ(。・ω・)ノ☆゚+.HAPPY BIRTH DAY 千歳!&HAPPY NEW YEAR 2011
一緒くたに祝ってごめんなさい(開口一言)
帰郷の関係でどっちもフライング気味だし・・ね・・・しょうがない・・・。
年末年始で事後→お泊り後、なちとユウ。ただいちゃいちゃさせたかっただけ。
たまにはユウジがデレでもいいかな…って。千歳の包容力にめろめろなユウジ。
まあ千歳もユウジの可愛さにめろめろなのですが(*´艸`)<自重などしない!!!(わたしが)
こんなテンションを維持したままであれですが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
20101227